(´・ω・`)バンババーン






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■概要


巨人の星(1966-1971)の終了後、1971年から1974年にかけてジャンプで連載されてたらしい野球漫画です。原作が梶原一騎だったのでマガジンかなぁと思ってました。


■あらすじ


いろいろあって四国・土佐嵐高校を中退した番場蛮は、高校の先輩で読売ジャイアンツに在籍している八幡太郎平の口添えで、同じくジャイアンツに投手として入団。
強い力をかさにかける存在が嫌いな蛮は当初、「巨人軍を内部から叩き潰す」 と息巻いて二軍で地獄のしごきを受ける。しかしそれに耐える中で成長を遂げ、"打撃の神様"川上監督に認められてアメリカ遠征に帯同、そして一軍に昇格。悪戦苦闘の末に魔球を生み出し、各球団のライバルたちと壮絶な戦いを繰り広げる。


■実名選手の登場


この時期の野球漫画にはよくある話ですが、めっちゃ実名選手が出るんですよ。

監督の川上哲治や長嶋茂雄、王貞治のON砲は言わずもがな。土井正三や堀内恒夫らV9戦士たちが次々描かれました。巨人だけでなく、"魔術師"三原脩(ヤクルト)や野村克也(南海)、村山実(阪神)など、当時の有名選手や監督たちも登場しています。

登場する実在の人たちの扱い、かなりフリーダムなんですよね。当時の状況はあんま知らんのですが、みんな怒らなかったのかな。
特に張本勲(日拓)なんかはオリキャラの明智(広島)に煽られてましたけど…あの人、そういうのにめちゃくちゃ文句言いそうなイメージありますけどねー。まあおおらかな時代だったんかな。きっとそうだな。


■番場蛮の変遷


このシリーズで一番好きなキャラクター、八幡先輩なんですよね。

侍ジャイアンツは、読売ジャイアンツがV6を達成した1970年から始まります。祝勝会の場で川上監督が「サムライ(のような野性味のある型にはまらない選手)が欲しい」と述べたとき、そばにいた八幡が「自分の故郷にサムライがいる!!」つって番場蛮を紹介するわけなんですよ。

しかしこの番場蛮、シリーズ後半へ進むにつれてやられた時の落ち込み方が激しくなり、どんどんサムライっぽくなくなります。
特にハイジャンプ魔球(後述)を破られたときなんかね、自分は出れないからって日シリの最中に地元へ帰って嘆きまくり、挙げ句の果てに投身自殺を試みるも6歳下の妹に救出&説教される始末。
どこがサムライやねん!!

原作者の梶原としてはどうも、魔球路線ではなく、泥臭い根性路線で行きたかったみたいなんですよね。泥臭さ=サムライらしさなんだと。 
ところが根性路線はあまり受けなかったようで、一軍に上がって少ししたあたりで魔球を投げる感じのアレに路線変更を余儀なくされたわけです。その絡みで蛮の性格が飛雄馬に近づいちゃったのかなぁ、と読んでて思いました。

つまり侍ジャイアンツと言いつつもあんまり主人公は侍じゃなかったわけですが、じゃあ誰が侍だったのか。
そりゃあ八幡太郎平ですよ。


■八幡太郎平という男


八幡ってのはすごい男なんですよ。

彼は蛮と同じ高校の三年先輩です。つまり蛮の入学と同時に卒業し、ジャイアンツへ入団したわけです。
それなのにちっとも偉ぶらず、入団した番場の面倒を何くれとなく見てやるんです。

試練は早々に訪れます。アメリカ遠征の際、二軍からは蛮と八幡が呼ばれるわけですが… 選手として呼ばれたのは番場蛮だけ。
(2巻)

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つらいよねぇ。仕事で言うたら、入社して数ヶ月の新人のお守りがオメーの仕事! 実質クビだかんね!って言われてるようなもんだよ。しかもそれを新人の前で言われちゃうんだぜ。キッツイよなぁ。

しかし男八幡、プライドを捨て、後輩の練習台に徹するわけですよ。
(2巻)

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すごいよね。

八幡は中盤までマジでずっとこんな感じ。蛮の一軍昇格後も快く練習に付き合います。
当然、二軍仲間からは煽られますよね。蛮が完成して練習台が不要となればクビは確実なわけですから、八幡はクビになるために必死こいてるんだと。
(6巻)

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けれど煽られた男八幡、平然と言い返すわけです。
(6巻)

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痺れるよね。これで20歳だぜ。おれが20のとき、絶対こんなこと言えなかったよ。今でも言えないんじゃないかな…。


そんな八幡先輩を天は見捨てませんでした。豪速球投手・番場蛮の練習にずっと付き合っていたおかげで、八幡の選球眼と度胸は図抜けたものになっていたのです。
アメリカ遠征でオリオールズから1打点を挙げたことをきっかけに、打者としての適性を見出されてクビが繋がった八幡!
(5巻)

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そして日シリでは代打ながらも出場の機会に恵まれ、おかげでサインまで求められる始末。
(11巻)

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でもそういうのに振り回されないあたりがまたかっこいいんですよねぇ。
(11巻)

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名脇役だと思います。
八幡先輩のために読む価値はありますよ。ほんまに。


■ハイジャンプ魔球


このころの野球漫画と言えば、魔球です。現実ではありえない投げ方や変化をする球種の総称ですね。

魔球の起源は、くりくり投手(1958-1963)のドロッカーブに遡ります。

ドロッカーブってのはあの、ドロップボールのような変化をするときもあれば、カーブのような変化をするときもある恐るべき魔球です。その対策について、劇中では「ドロップの変化をしたときはドロップを打てばいいしカーブの変化をしたときはカーブを打てばいい」と解説されています。どの辺が解説なのかよくわかりませんが、とにかくそのように言われているわけです。

そして魔球の概念を満天下に知らしめたのは、巨人の星(1966-1971)に登場する大リーグボールでしょう。あの「ボールが土煙を巻き込むことにより保護色のような効果を発揮し消える魔球となる」みたいなやつです。

そうした流れを受けた本作に魔球が登場しないわけがなく。

最初に登場したのは8巻、ハイジャンプ魔球です。

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ハイジャンプして投げるからハイジャンプ魔球。読んで字の如し。説明不要です。

やーでもすごいですよねこれ。投げるときにジャンプするわけですから、ほぼノーモーションでこんだけ跳ぶんですよ。ジョジョじゃないんだから…。なんだよバインって。

ハイジャンプ魔球の魔球たる所以は、ボールが発射される位置の高さ。一般に角度のついたボールは打ちづらく、高身長の投手はそれだけで少し有利がつくのです。
身長160cmの番場蛮は、その低身長を補うべくこの魔球を開発したのでした。

にしても跳びすぎですよね。

ジョジョ3部(1989-1992)のVS DIOの承太郎とか。
(電子 モノクロ版10巻)

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ジョジョ4部(1992-1995)のジャンケン小僧とか。
(電子 モノクロ版8巻)

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この手合いぐらい跳んでる。そうはならんやろ。


しかしハイジャンプ魔球、激しくジャンプするせいで猛烈な土煙を巻き起こしており、バントで目の前に転がされると、ジャンプした本人はもちろんカバーに入った三塁手も捕球できずに滅ぶとかいう致命的な欠点がありました。
初期からのライバルであるオリキャラの眉月(ヤクルト)によってこの弱点を暴かれた蛮は、日シリを前にして戦線離脱。故郷へ逃亡し投身自殺を試みるも妹に救出されて説教を食らいます。


■大回転魔球


大リーグボールなんて洒落た名前じゃないので説明不要ですね!!

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大回転して投げる魔球です。残像で手が増えたように見えるため、どこからボールが飛んでくるかわからず打者は打てない、という理論付けがなされています。長嶋茂雄もびっくりだぜ。
(にしてもゴーッじゃないんだよほんとに)

ちなみにこのときアシスタントをやってたのが、あのリングにかけろ(1977-1981)の車田正美らしく、なんか納得しちゃいました。
そらこんなんの現場にいたらねぇ、ボクシング漫画でも「パンチを打った側と打たれた側は双子だったので打たれた側はそのままエネルギーを相手に返すことができたのだ」とか言い出すわ。わかる。


大回転魔球は、回転によって球威を増した恐るべき豪速球でした。それ故に「とても重いバットでミートすれば軽く当てるだけでヒットになる=振り遅れが存在しない=残像によるタイミングずらしを無効化できる」という超理論によって打ち破られます。

もっとも、そんな重いバットでは通常の直球にすら対応できません。ですから、大回転魔球と他の球を投げ分ければなんとかなったとは思うのですが…。
同郷の女の子(たまーに登場する一応のヒロイン役)に「ハイジャンプや大回転は小細工だし蛮の魅力であるサムライっぽさを損ねている」みたいなツッコミを受けてあえなくお蔵入りとなりました。
ハイジャンプ魔球にせよ大回転魔球にせよ、通常の投球の何倍もの体力を使う欠点はありましたしね。投手寿命を縮める懸念はどうしてもあったので、仕方のないことだったのかもしれません。

他にハイジャンプ魔球と大回転魔球を一緒くたにした「ハイジャンプ大回転魔球」なるものもありましたが、やってることは一緒なので割愛します。


■ハラキリ・シュート


ヒロインにツッコミを入れられた後、蛮が「サムライっぽい、男らしい魔球」を追い求めてたどり着いたのがハラキリ・シュートです。

ハラキリはこれまでの魔球と違い、特別な球ではありません。ただのめっちゃ曲がるシュートです。

変化球が男らしいかどうかは諸説あり、例えば2005年の清原(巨人)なんかは、勝負所で変化球を投げてきた藤川(阪神)に向かって「チンコついとんのか!」と暴言を吐いているわけです。直球勝負しろやってことですね。

そう考えるとシュートも男らしくないんと違うか説はあるわけですが、劇中では解説席にいた金田正一が「シュートだけは他の変化球と違って男らしいのでセーフ」と断言したことで、男らしいということになりました。

この球もまた、パの野村(南海)によってオールスターゲームの際に弱点を見つけられてしまいます。
それは、バント。

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捕手の目の前に打者がバットを突き出すと…。

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ハラキリの変化が強烈すぎて、軌道を隠されるだけで捕球に失敗。取り損ねた球は捕手の体を抉り、退場に追い込んでしまいます。アストロ球団かよ。

これを続けられて控えの捕手がいなくなると9-0コールド負けが決定するため、蛮はハラキリを投げられなくなってしまいました。


■分身魔球


番場蛮が編み出した最後の魔球が、分身魔球です。
その名の通り球が分身するのですが、原理は説明されません。とにかく分身するんです。

シーズン終盤、V10をかけた中日3連戦。絶対に落とせない戦いに際し、川上監督は蛮に三連投を強います。

その最終戦、9回表2死の状況で迎えるバッターは球界最高のパワーヒッター、オリキャラの大砲万作。
蛮は渾身の分身魔球で万作から空振り三振を奪い、中日から3勝目を奪いました。

喜びながらマウンドに駆け寄る八幡が見たのは…。













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4年近くにわたって体を酷使したため、マウンド上で仁王立ちしたまま息を引き取った後輩の姿でした。
番場蛮。享年19歳。初めて分身魔球を投げてから18P目。早すぎる死でした。


…死んじゃうんですよねぇ、蛮。
根性論に基づく努力の先にあるのは滅びなんですよ。飛雄馬は肩を壊すし、あしたのジョー(1967-1973)の矢吹丈は燃え尽きちゃうし。死んでもいいと思ってやったら死ぬんですよね。
そういう当たり前から逃げない終わり方なので、納得ではありますが…。

ほどほどにしておかないと幸福には繋がらないんだなぁ、としみじみ思いましたよ。徹夜すると早死にするらしいしね。おれも早寝しよ。書いてるうちに日付変わったけどね。



■余談:清原VS藤川


2006年のオールスターゲームでは清原(オリックス)VS藤川(阪神)の再戦が実現。藤川は渾身の直球を投げ、清原から空振り三振を奪っています。






■おまけ:やる夫と学ぶ野村克也




当時の世相が偲ばれます。







 
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