(´・ω・`)あの日のことを、いま語ろう
2012年1月21日。
あの日のデュエルマスターズは、他のどんなゲームよりも面白かった。
■歌姫VS邪神
2011年7月23日。殿堂が更新され、ドロマー、黒緑、不滅大蛇は滅ぼされた。
それと並行してE1ブロックが追加されて以来、メタゲームは過去にタイムスリップしたかのような様相を呈していた。
環境トップをひた走るのは歌姫。
かつてキング・アルカディアスやロマネスクを率いた彼女は、ボルバルザークの末裔・エクス、そして瞬く間に山札を削りきるザビ・ミラを仲間に引き入れることでメタゲームに帰還を果たしていた。
相対するはオールデリートの系譜に連なる邪神。かつて特製の魔弾で敵を蹂躙したM・ロマノフは、新たな仲間としてガイアール・カイザーを手に入れている。
邪神の銃口から放たれるシューティング・ホールの前では、不滅大蛇を足蹴にした時空の支配者も塵と化す。
とにかく、両方とも出鱈目な強さだった。
アマテ、そして紋章という恵まれたカード群から降臨するキリコはただ出現するだけで相手の山を削り取っていく。
後にミルザムループなどのLOデッキはいくつか出現するものの、ただ場に出てくるだけでざっくりと山を削り切っていたいい加減な生物はキリコぐらいのものだろう。
山を削り切れないと判断した場合はザビ・ミラがヴォルグの代わりにヤヌスを呼び寄せ、キリコ+SA化したザビ・ミラ+覚醒したヤヌスで盾を割り切っていた。もう無茶苦茶である。
他、ザビ・ミラの代わりにバジュラズ・テラで安全を確保するタイプもあった。
一方のMロマは、愚直に盾を殴る伝統的なビートダウンだった。
一般的に普及していたのは赤黒緑のいわゆる黒M。しかしその一般的な型ですら採用する小型クリーチャーに差異があり、 構築の妙を感じさせていた。青Mならば構成の差異はなおの事大きい。
そんな差異こそあったものの、基本的な流れはさして変わらない。何事もなければ4キルを可能とする殴打力は現在の競技シーンでも通用しうる。
無論他のデッキが手をこまねいていたわけではなく、権利戦やCSでは黒緑速攻やドロマーハンデス、青黒ハンデスなどが二強の間隙を縫って蠢いていた。カードパワーの差は歴然としていたが…。
そして。
2012年1月21日。
かつて不滅大蛇の墓場となった綾瀬の会場で、第5回関東CSが始まる。
■第5回関東CS
関東CSは予選からマッチ制を採用していた。5回戦を戦い抜いたトップ16名が決勝へ進むことを許される。
その戦いにおいて多くのプレイヤーが、Mロマまたはキリコという順当な選択をした。
わずかながらいたのはそれをメタったドロマーハンデス。そして環境速度の基点たる黒緑速攻。
大会は大きな混乱もなく順調に進み、そしてほぼ順当なベスト16が出そろった。そこには東北の古豪・UMEBA選手やアッー!選手、土浦の雄・絶対領域選手らが名を連ねている。
印象深いのは土浦の強豪・さっぴー選手のネクラザビミラ。
メタはMロマ多し、と読み切ったうえでジル・ワーカを採用し、見事に予選を抜けていた。
メタる側に回るデッキはDMにおいて不利。それが定説だ。
しかし、真に強いプレイヤーは常識をあっさりと覆す。その見本のようなデッキだった。
それに気を取られたか。
あの時。
会場で起きていたメタゲームの異常に、まだほとんどの人間が気付いていなかった。
■来訪者
彼は、事前に登録していたわけではなかった。
起きてデッキをまとめ、しかしカードが足りないのでしぶしぶエル・カイオウを入れる。
青白ソードを手に彼は会場へ向かい、当日受付を何とか済ませて大会の一員となった。
勝てないと思っていたわけではないだろう。けれど、絶対に勝てると思っていたわけでもないだろう。
だが。
周囲の、そして彼自身の予想に反して手にした青白ソードは勝ち続ける。
並み居る強者を打ち倒し、ベスト16。
そこに至ってなお青白ソードは、彼は、負けない。
勝った。次も勝った。
そして次も。勝った。
気が付けば、最早自身以外に残る選手ははただ一人。
青白ソードを駆ってここまで勝ち抜いた彼、じゃぎ選手は絶対領域選手との戦いに臨んだ。
そして、彼は敗れた。
優勝したのは、忘れられた古代の遺物・ギガボルバを見出した絶対領域選手。
彼が使ったデッキ…その名はM・ロマノフ。
■メタゲームへの理解
じゃぎ選手の準優勝は、少なからず衝撃を与えた。大会が終わって数日後、彼はこう語っている。
「vaultの青白ソードにエル・カイオウが入り始めて本当に申し訳ないと思ってるからな」
彼は決して万全の態勢で戦い抜いたわけではなかった。だが、準優勝。
ネクロの夏という故事を彷彿とさせるこの出来事は、メタゲームの妙といえるだろう。
他方で、これはある重大な事実を示唆している。
我々は、実は環境のことなど大してわかっていないのではないか?多くのことを見落とし、その見落としの上に成り立つ砂上の楼閣を環境と呼んでいるに過ぎないのではないか?
この疑惑は、これよりおよそ1年半後に”ヒラメキスネーク”というデッキとして現実化する。ヒラメキスネークのパーツは2012年の中ごろから環境に揃っていたにもかかわらず、トーナメントシーンへ登場するまでそこから実に1年を要しているのだ。
我々は…今でもこのゲームを理解しきっているとは言えないのかもしれない。
■その後
この大会からおよそ2か月後、2012年3月15日。
新たにプレミアム殿堂が発表された。
時代の荒波を掻い潜ってきた3種のカードが新たに禁止され、ここにキリコ-M期は終わりを告げる。
同年8月11日にはボルバルザーク・エクス、そして次元流の豪力が殿堂入り。キリコの後継者としてCS、更にはE1環境を制したNエクスの時代にもピリオドが打たれたのだ。
この後、我々はかつてない怪物と遭遇する。
同年9月22日。鬼丸「覇」がその姿を現したのだ。
ミラクルとミステリーの扉が、ホーガン・ブラスターが眠りから呼び覚まされ、環境は混迷を深めていく。その先の物語はきっと読者諸兄の方が詳しいだろうから、話をここで終えることにしよう。
長きにわたって続くデュエルマスターズ。
第5回関東CSを改めて振り返った今、その真の面白さとはデュエルマスターズが生み出すメタゲーム模様、そしてそのプレイヤーたちが織り成すドラマであると確信している。
だから。
デュエルマスターズがどれだけ変わっても、戦うプレイヤーたちが熱き魂を持った決闘者である限り。
俺たちはこう、断言できるはずだ。
「デュエルマスターズは、面白い!」
2012年1月21日。
あの日のデュエルマスターズは、他のどんなゲームよりも面白かった。
■歌姫VS邪神
2011年7月23日。殿堂が更新され、ドロマー、黒緑、不滅大蛇は滅ぼされた。
それと並行してE1ブロックが追加されて以来、メタゲームは過去にタイムスリップしたかのような様相を呈していた。
環境トップをひた走るのは歌姫。
かつてキング・アルカディアスやロマネスクを率いた彼女は、ボルバルザークの末裔・エクス、そして瞬く間に山札を削りきるザビ・ミラを仲間に引き入れることでメタゲームに帰還を果たしていた。
相対するはオールデリートの系譜に連なる邪神。かつて特製の魔弾で敵を蹂躙したM・ロマノフは、新たな仲間としてガイアール・カイザーを手に入れている。
邪神の銃口から放たれるシューティング・ホールの前では、不滅大蛇を足蹴にした時空の支配者も塵と化す。
とにかく、両方とも出鱈目な強さだった。
アマテ、そして紋章という恵まれたカード群から降臨するキリコはただ出現するだけで相手の山を削り取っていく。
後にミルザムループなどのLOデッキはいくつか出現するものの、ただ場に出てくるだけでざっくりと山を削り切っていたいい加減な生物はキリコぐらいのものだろう。
山を削り切れないと判断した場合はザビ・ミラがヴォルグの代わりにヤヌスを呼び寄せ、キリコ+SA化したザビ・ミラ+覚醒したヤヌスで盾を割り切っていた。もう無茶苦茶である。
他、ザビ・ミラの代わりにバジュラズ・テラで安全を確保するタイプもあった。
一方のMロマは、愚直に盾を殴る伝統的なビートダウンだった。
一般的に普及していたのは赤黒緑のいわゆる黒M。しかしその一般的な型ですら採用する小型クリーチャーに差異があり、 構築の妙を感じさせていた。青Mならば構成の差異はなおの事大きい。
そんな差異こそあったものの、基本的な流れはさして変わらない。何事もなければ4キルを可能とする殴打力は現在の競技シーンでも通用しうる。
無論他のデッキが手をこまねいていたわけではなく、権利戦やCSでは黒緑速攻やドロマーハンデス、青黒ハンデスなどが二強の間隙を縫って蠢いていた。カードパワーの差は歴然としていたが…。
そして。
2012年1月21日。
かつて不滅大蛇の墓場となった綾瀬の会場で、第5回関東CSが始まる。
■第5回関東CS
関東CSは予選からマッチ制を採用していた。5回戦を戦い抜いたトップ16名が決勝へ進むことを許される。
その戦いにおいて多くのプレイヤーが、Mロマまたはキリコという順当な選択をした。
わずかながらいたのはそれをメタったドロマーハンデス。そして環境速度の基点たる黒緑速攻。
大会は大きな混乱もなく順調に進み、そしてほぼ順当なベスト16が出そろった。そこには東北の古豪・UMEBA選手やアッー!選手、土浦の雄・絶対領域選手らが名を連ねている。
印象深いのは土浦の強豪・さっぴー選手のネクラザビミラ。
メタはMロマ多し、と読み切ったうえでジル・ワーカを採用し、見事に予選を抜けていた。
メタる側に回るデッキはDMにおいて不利。それが定説だ。
しかし、真に強いプレイヤーは常識をあっさりと覆す。その見本のようなデッキだった。
それに気を取られたか。
あの時。
会場で起きていたメタゲームの異常に、まだほとんどの人間が気付いていなかった。
■来訪者
彼は、事前に登録していたわけではなかった。
起きてデッキをまとめ、しかしカードが足りないのでしぶしぶエル・カイオウを入れる。
青白ソードを手に彼は会場へ向かい、当日受付を何とか済ませて大会の一員となった。
勝てないと思っていたわけではないだろう。けれど、絶対に勝てると思っていたわけでもないだろう。
だが。
周囲の、そして彼自身の予想に反して手にした青白ソードは勝ち続ける。
並み居る強者を打ち倒し、ベスト16。
そこに至ってなお青白ソードは、彼は、負けない。
勝った。次も勝った。
そして次も。勝った。
気が付けば、最早自身以外に残る選手ははただ一人。
青白ソードを駆ってここまで勝ち抜いた彼、じゃぎ選手は絶対領域選手との戦いに臨んだ。
そして、彼は敗れた。
優勝したのは、忘れられた古代の遺物・ギガボルバを見出した絶対領域選手。
彼が使ったデッキ…その名はM・ロマノフ。
■メタゲームへの理解
じゃぎ選手の準優勝は、少なからず衝撃を与えた。大会が終わって数日後、彼はこう語っている。
「vaultの青白ソードにエル・カイオウが入り始めて本当に申し訳ないと思ってるからな」
彼は決して万全の態勢で戦い抜いたわけではなかった。だが、準優勝。
ネクロの夏という故事を彷彿とさせるこの出来事は、メタゲームの妙といえるだろう。
他方で、これはある重大な事実を示唆している。
我々は、実は環境のことなど大してわかっていないのではないか?多くのことを見落とし、その見落としの上に成り立つ砂上の楼閣を環境と呼んでいるに過ぎないのではないか?
この疑惑は、これよりおよそ1年半後に”ヒラメキスネーク”というデッキとして現実化する。ヒラメキスネークのパーツは2012年の中ごろから環境に揃っていたにもかかわらず、トーナメントシーンへ登場するまでそこから実に1年を要しているのだ。
我々は…今でもこのゲームを理解しきっているとは言えないのかもしれない。
■その後
この大会からおよそ2か月後、2012年3月15日。
新たにプレミアム殿堂が発表された。
・《エンペラー・キリコ》(殿堂入りから昇格)
・《邪神M・ロマノフ》(殿堂入りから昇格)
・《母なる紋章》(殿堂入りから昇格) 時代の荒波を掻い潜ってきた3種のカードが新たに禁止され、ここにキリコ-M期は終わりを告げる。
同年8月11日にはボルバルザーク・エクス、そして次元流の豪力が殿堂入り。キリコの後継者としてCS、更にはE1環境を制したNエクスの時代にもピリオドが打たれたのだ。
この後、我々はかつてない怪物と遭遇する。
同年9月22日。鬼丸「覇」がその姿を現したのだ。
ミラクルとミステリーの扉が、ホーガン・ブラスターが眠りから呼び覚まされ、環境は混迷を深めていく。その先の物語はきっと読者諸兄の方が詳しいだろうから、話をここで終えることにしよう。
長きにわたって続くデュエルマスターズ。
第5回関東CSを改めて振り返った今、その真の面白さとはデュエルマスターズが生み出すメタゲーム模様、そしてそのプレイヤーたちが織り成すドラマであると確信している。
だから。
デュエルマスターズがどれだけ変わっても、戦うプレイヤーたちが熱き魂を持った決闘者である限り。
俺たちはこう、断言できるはずだ。
「デュエルマスターズは、面白い!」
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