(´・ω・`)アーカルムとかいう実装されないコンテンツ




ねずみ男というキャラクターはゲゲゲの鬼太郎において「ロクでもないやつ」として描かれている。話によってはろくでなしを通り越して完全な悪人だが、なぜだか鬼太郎は毎回彼を許してしまう。まあ、憎めないやつとして扱われている…ということになるのだろう。

墓場におけるねずみ男の扱いもさほど変わりはしない。ただ彼の本質である「怪奇愛好家」という点がゲゲゲよりも殊更に強調されて描かれている。
(墓場の方が先なのだからゲゲゲと比べるのも奇妙な話だが、大半の読者にとってはその方がわかり良いだろう)

それで。

アホな男においてねずみ男が手がけた一大事業といえば、それは毛生え薬の販売である。およそ怪奇さとは無縁の事業に思えるし、事実関係ない。
なんだってねずみ男がハゲの救済に乗り出したかということは全く語られていないが、察するに金がなかったのであろう。

妖怪と言えば病気もしないし学校もないし死ぬこともないのだから金がいるだなんて随分奇妙なことだと思われるかもしれない。実際のところ、「おかしなやつ」では鬼太郎が数年もの間飯を食べずして生き延びていることが語られる。
飯を食わなくたって、妖怪は生きて行けるのである。

生活には困っていないはずのねずみ男が金を欲しがるのは怪奇なことのためだろう。吸血木という怪奇なものを育てるために100万円ばかりを要した経験をこの妖怪は持っている。
だから血を売って金を作り、そしてその金で毛生え薬の販売を…なんてことをしているのだろう。鬼太郎と違って商才はある。

そういうわけで、ねずみ男は餅のような毛生え薬をこねながら登場する。鬼太郎があの世保険を売りつけようと家を訪ねると、ねずみ男が毛生え薬をこねているわけである。
鬼太郎が、何やってんだいと話しかける。

「何やってんだい」
「お前こそ何やってんだい」
「お願いがあるんだが…あの世保険を始めたんだ」
「わずかな現世の掛け金で来世の幸福を約束するとでも言うのかネ」
「そうだ。イエス・キリストも手がけなかった社会事業さ」
「それでついでにお前も休載されようってわけかネ」
「もちろんだ。それで第一号の加入者として君を予定してるんだ」
「冗談じゃない。ありもしない世界にびた一文だって払えるかヨ」
「ありもしないとはなんだネ。ここに閻魔大王の許可証も携えているんだぜ」
「ソンナもので現代人がナットクするかネエ」
「こいつ気高い事業にケチをつける気だな」
「気高い?気高いのはお前ばかりじゃないぞ。俺だって気高い事業をやろうとしてるんだ。全世界の禿頭を救済しようと毛生え薬の製造に着手したんだ」
「しかしよく資金があったネ」
「大切な血を売ったんだ」
「ナニ、血を売って作ったんか」
「そうよ。事業家はつらいよ」
「本当に毛が生えるのか」
「生えるなんてもんじゃない。生えすぎるほどだ」
「そのモチみたいなのがそれかい」
「喜んでくれ。大量生産が軌道に乗っているところだ。やがて世界中の禿頭から神として拝まれる日も近い」

ここの会話があんまりにも好きなので引用してしまった。
墓場鬼太郎がつくづく偉いと思うのは、この会話に6ページを費やしているところである。6ページを費やしているが故に現れる水木しげる特有の「間」が好きなのだ。当時は今のような週刊連載ではなく貸本制度だったのだからあまりページを意識することもなかったのかもしれないが。

ともかく、ねずみ男は毛生え薬を売りに行く。ところが予想外の事態が生じる。

彼が売った血は病院で死にかけのヤクザの親分に輸血されたが、なんとその親分が輸血された途端に元気になってしまった。
そうなれば、血の提供者が猛烈に捜索されることになることは自明だが、そんなこととはつゆ知らぬねずみ男は事もあろうに自分を探しているヤクザ連中に毛生え薬を売りに行ったのである。

この話において、珍しくねずみ男はあくどいことをしていない。怪奇を追い求めてもいない。捕まった時も、血を回収して逃げ出すだけ。
こういう回もあるのだ。