(´・ω・`) KIller Queen







 


■予告



■あらすじ
1989年、壁が崩壊する直前のベルリン。東西の情報部員たちがしのぎを削るこの街で、1人の英国人スパイが殺され、東ドイツ秘密警察によって作成された西側の潜入工作員リストが奪われた!
MI6はリスト奪還のため、ロレーン・ブロートンを現地に送り込む。リストを持っているのは何者か。裏切り者「サッチェル」とは誰か。ブロートンは、MI6ベルリン支局のデヴィッド・パーシヴァルと組み、事件を追う。
死闘の果てに待ち受けていたのは、驚愕の真実だった。


■結論
スゲェ良かったです。アマプラにあるので見てね。


■事件の概要
話としては、MI6の「サッチェル」が裏切ったのでKGBにリストが奪られました!でも奪ったKGB要員も組織を裏切って逃亡中です!リストがどこ行ったかわかんねぇ!って感じなんですよ。
んでリストの所在とサッチェルの正体を巡って話が進む…んですが、最後にどんでん返しが。

サッチェルは、なんと主人公であるブロートンなんです。しかもブロートン、MI6を裏切ってKGBについたと見せかけて、実はCIAの三重スパイなんですね。この辺が最後の最後で明かされるんですけど、そうなるとそこまでの登場人物たちの行動の意味が全部変わってくるんですよ。

例えば、ブロートンがベルリン入りしたとき、「パーシヴァルの代理」と偽ってKGBがブロートンを迎えに来ます。ぱっと見、ここはサッチェルが情報を漏らしてブロートンを襲わせたシーンなんですが、上記の真実を踏まえると、ガラッと変わっちゃうわけですよね。
KGBはただ、身内を迎えに来ただけなんです。
…というような認識をひっくり返す展開がめっちゃ詰め込まれてて。非常に良かったですね。フォーサイスとかル=カレが好きな人は、絶対に見たほうがいい。
(ジャッカルの日とか、寒い国から帰って来たスパイとか、ぜひ読んでね!)


■ブロートンは本当に三重スパイなのか
さて、ここまで嘘が盛り沢山だと、ラストを信じていいかどうかも分かりません。

最後、ブロートンはCIAの幹部と一緒にアメリカに戻るんですよね。お疲れ様!とか言われて。でももう、この描写が本当かもよう分からんですよね。
特にブロートン、ちょいちょいウォッカ飲んでるシーンとかあって、ロシア人感が醸し出されているわけです。

個人的には、ラストだけは本当なんじゃないかなーと思ってます。
結局ブロートン、KGBベルリン支局の上級ケースオフィサーを殺しちゃうんですよね。ラストで。
奪われたリストには「ブロートンはCIAだぞ」って書いてあったせいで、最終的にKGBにバレちゃうんですよ。オメー三重スパイやんけ!!!!!!!つって。
んで殺されかかったんで、逆に殺しちゃうんですね。

史実を見ると、現場に近いケースオフィサーが、別のケースオフィサーが運用しているモグラ(二重スパイ)を知らないってことはあり得るようですが、統括する立場の人間は把握してるみたいなので。ブレモヴィッチが上級ケースオフィサーで、ブロートンが「CIAについたと見せかけたKGBのスパイ」であるならば、殺す理由がないんですよね。知ってるはずなんで。

やーでもどうかなー、ブレモヴィッチは普通に現場をウロウロしてるので、ひょっとしたら知らなかったのかもしれないけど…でも殺す前に本国に確認取るはずなんで、もしブロートンがKGB側だとしたら殺さない。

ので、ブロートンはKGB側ではない、と思ってます。


実はMI6側ってオチもないかなぁ。そうすると、流石にパーシヴァルを殺す意味がないしね。あ、正体がバレたせいでパーシヴァルを殺しちゃうんですけど。ブロートン。
パーシヴァルは有能な工作員という評価だったので、同じ組織の人間なら殺すこたないだろーなー感がね。


■工作員パーシヴァル
有能でありながら、結局ブロートンに殺されてしまうパーシヴァル。
アホやんけ!というわけではなくて、これは必然だった感があるんですよね。

パーシヴァル、ベルリンが大好きなんですよ。なぜなら自分の思いのままに振舞えて、好き放題やれるから。だから、この状態がずっと続いて欲しい。壁は壊されて欲しくないし、冷戦は終わって欲しくない。

結果、彼は街にバランスをもたらそうとするんですよ。状況が永続するように。
最終的にパーシヴァルはリストを手に入れるんですが、そこで「ブロートン=CIA」ってことをKGBに教えちゃうんです。
ブロートンは外からやって来た邪魔者だから、縄張りを荒らされる前に消えて欲しかったんですね。

そう考えていくと、彼の死に様が印象的で。
終盤、壁が怖されていく様子をバックに、彼はブロートンに撃たれて死ぬんですよ。彼の愛した壁が崩れ、全てを失うタイミングで死ぬ。象徴的ですよねぇ。
やーほんと、スパイなんかなるもんじゃねーわと思います。

最近、自衛隊の別班について書かれた本を読んだんですが、元班員たちは「訓練の結果、家族すら信じることができなくなった」って言うてるらしくて。
騙し合いの世界に生きるのって、大変なんでしょうねぇ。


■ベルリンの壁の崩壊
ついでにもう1冊。

冷戦期にCIAでケースオフィサーを務めたフランシス・バーガーって人だったかな、確か自伝的な本を出してるんですけど。その本の中で、当時ベルリンに駐在していたバーガーが、リアルタイムで壁の崩壊を見るシーンがあるんです。

ベルリンの壁って、東ドイツ政府の広報官であるシャボフスキーが「ようわからんけどドイツ国民は自由に壁を超えて移動してええで!細かいことは知らんが今すぐ適用や!」っつー信じられないほど雑な発言をテレビで流しちゃったせいで崩壊したんですよね。
で、それを見た国民が壁に殺到したと。

バーガーによれば、検問所の連中もテレビを見ていたせいで「確かに…言ってたし…」みたいな感じになって、なし崩し的に人の通過が認められたと。
すごい話ですよね。互いにどつきあった挙句、相手がうっかり口を滑らせたせいで目的達成って。

劇中ではブロートンが「手にした情報で壁は崩れるしオメーの遊び場も終わりだよ」ってパーシヴァルに言うんですけど、その辺は史実としてはちょっとどうなのよとは思いましたね。


■総括
見ましょう。






 
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