(´・ω・`)何がとは言っていない




 

■あらすじ
結婚し、娘も産まれ、幸せな生活を送っていた田原秀樹。だが彼の周囲では不可解な事件が起こっていた。
秀樹は親友の津田を頼り、オカルトライター・野崎と霊媒師の真琴を紹介してもらうが…。


■見た
ホラー、苦手なんですよね。見た後、3日ぐらいはものすごく警戒しながらトイレに入りましたし、なかなか寝つけませんでした。
ただ怖かったかというと、オカルト的な怖さはさほどかな。ホラーシーンはちゃっちゃか終わらせて、場面転換後からテンポのいい曲流してくれてね。そこが主眼じゃない映画でしたね。

あまりにもホラーが苦手なので、友達を引っ張って2人で見に行ったんですけど、終了直後の感想は2人とも「人間関係はちゃんとしようね…」でした。そういう映画だったんすよ。


■人間関係の怖さ
映画は3部構成のようになっていて、秀樹視点、秀樹の嫁視点、野崎視点の順で展開されます。

最初の2部はねぇ、田舎のジメジメした人間関係とか、新郎新婦の品定めをし合う招待客とか、とにかくずっとそういう場面が展開されるわけです。

いい父親に見えた秀樹もね、死んだ後に、ブログやパパ友との交流にかまけてまともに家事育児をしない、上っ面だけの父親であることが分かったり。
秀樹の親友ということになっていた津田(民俗学者)も、秀樹の嫁と不倫してたり。
嫁も、津田との付き合いの邪魔になる娘を不要物扱いしたり。

あらゆる人間が全体的にアレだったので、特に誰が悪いってのはないです。みんなちょっとずつダメ。
最初は秀樹がダメだったせいで嫁に連鎖したのかと思ったんですけど、よく見ると嫁もね、飯作ってるシーンの全てにおいてパスタ作ってるんですよ。過去回想でもパスタ作ってる。
まさかメシマズ系か…?みたいなね。世の中は難しい。

いやでもこのあたりの描き方は本当にうまかったです。「こういうの、普通にあり得るレベルの話だよね」というラインに設定がまとまっており、自分が生きている日常から切り離せない、地続きな映画ですよ。ゆえにホラー的な怖さは薄いんですけれど、別の意味で怖い。

テンポが良かった&オカルト描写が派手だったので見ている間はこの辺がメインという印象をさほど受けませんでしたが、いま振り返ってみるとホラー映画と言っていいか怪しかったな。面白かったんですけどね。


■「来る」のは何者か
この映画では、襲って来るやつの正体は不明瞭なまま終わります。よう分からんけどなんかそういうヤバイ奴が来とるんやな、ぐらいの感じ。

原作「ぼぎわんが、来る」を読んでれば、「三重県の古い伝承にある" ぼぎわん "っつー間引きされた子供とか姥捨てされた老人の霊の集合体が来るのね」ぐらいのことは見て分かるんですが、そもそも原作ですら正体の調査には力点がおかれていないんです。ので、映画で人間の感情を描くための道具としてぼぎわんを扱い、タイトルをただ「来る」だけにしたのはセンスあるなーと思いました。

何が「来る」んでも良いんですよ。そこは本質じゃない。「来る」のがホッケーマスク被った殺人鬼でも話の筋には影響ないです。

ただ、タイトルがすっきりしたせいで検索に引っかかりづらくなって興行的に微妙な結果につー説はあるみたいですね。ほんとかどうか分からんですが、なろう系みたいな長いタイトルの方がネット上では有利なのかもしれんね。


■登場人物で一番ヤバイのは娘
しかし、何故来たのか。

映画でははっきりとは書かれてないんですが、おそらく冒頭、ばーさんと秀樹が会話したとこがトリガーじゃないかなぁ。
秀樹の後輩が死んだ一件から考えると、直接会話するとアウトっぽいんですよね。
冒頭の時点でばーさんはすでに半ば取り憑かれており、会話した秀樹を追って関東まで来た…んだと思います。襲われ始めたの、ばーさんの死後だからね。

そう考えれば、マジで無関係な後輩が死んだのも「会話しちゃったから」だと納得がいきます。
そもそもなんでばーさんが取り憑かれてたかっつーのは映画では描かれてないですね。原作を読むと「色々あってじーさんを殺すためにばーさんが呼んだ」的な説明がなされているので、まあそうなんでしょう。

問題はここからなんですよ。

映画での死亡順は、過去回想の近所の子→ばーさん→後輩→秀樹→嫁→津田→ゴーストバスターズ。
で、ばーさんと会話したのは秀樹。

普通に考えりゃ、秀樹の死亡時点で話が終わってても良いはずです。でも終わらない。
お気付きですね、ばーさん以外にも呼んだ奴が居たんです。

まずは津田。秀樹の親友のような面をしつつ秀樹のものを奪って遊ぶのが楽しかったなどと終盤で供述するヤバイ奴で、不倫もその一環。
この男、不倫ついでに「お守りやで」とか言いつつ魔導札を設置してたんですね。魔を導く札です。そのまんまです。遊戯王で言ったら儀式魔法です。

そして…再び襲来したぼぎわんを、手懐けて呼び出せるようになったマジにヤバイやつもいました。娘です。
娘、2歳とか3歳とかそんなんですからね。本当にやばい。

一番ゾッとしたのは、嫁が死ぬシーン。秀樹の死後にぼぎわんが再び家を襲い、慌てて嫁と娘が逃げ出すんですよ。
でも行くとこなんかないし、夜まで飯屋なんかをフラフラ歩いた後に「トイレに行きたい」という娘を連れて、駅の個室に入る。

なーんもわかってない娘は呑気に聞くわけですよ。「これからどうすんの?」つってね。
嫁はもう打つ手なしなんで、「どうしようねぇ…」みたいに答える。
直後にぼぎわんが襲来し、嫁を殺して娘を攫っていくんです。

この時はなんとも思わなかったんですけど、終盤に日本最強の霊能者っつー設定のキャラが「この子(娘)はアレを手懐けたんですよ!あの世に返します」みたいなことを言うシーンがあるんですよ。

ん?と思って。手懐けたって、じゃあ「どうしよう」って答えた直後に襲われたのはつまりそう言うこと…?

最終的に娘は助かるんですけど、ラストシーンがわけわからんのよ。娘はオムライスが好きで、オムライスの国があったら〜みたいな歌を口ずさむシーンがあるんですけど、CGアニメーションでがっつり作られたオムライスの国が画面いっぱいに広がるんですよね。
もちろん、娘が見てる夢ではありますよ。ただこのシーンが30秒ぐらい続く意味がわからない。

ここは諦めてググったんですけど、「娘が現実と向き合ってない」って言う意味のシーンらしいですね。だからまだぼぎわんになっちゃう可能性があるぞと、終わってないんだぞと、そう言う意味合いのシーンらしいです。

そう言う諸々を考えると、登場人物の中で一番ヤバイのは娘だと思いました。


■ゴーストバスターズ
この映画、既に述べたように、オカルトなアレで怖がらせようとはあまりしてないっぽいんですよね。だからか、オカルトパートの振り切れ方がすごい。

終盤、ぼぎわんを迎え撃つために準備するシーンがあるんですけど、日本中から霊能者が集まってくるんですよ。んでお祓い?をした木で舞台を組んで、その上で巫女が舞ったりするのね。
この「日本中から霊能者が集まってくる」シーンが気合い入ってて。
「沖縄から来たユタがタクシーごとトラックに潰される」「それを聞いた神主チームが新幹線を途中下車、ばらけて関東入りする」「ばらけるときにじーさんが" 誰か1人ぐらいはたどり着くだろ "とボソッと言う」「カプホで目覚めた神主チームが白装束に着替える」あたりね。

ホラー映画でこんな熱いシーンってあるんか…?と首捻りながら見てましたが、まあこれを見に来たようなもんだったので良かったです。あとで原作読んだら、案の定ありませんでした。監督の趣味なのか、一般受けを意識したのか。

なおゴーストバスターズ、ぼぎわん襲来から5分ぐらいで全滅しました。


■総評
全部書くのもなんなのでここまでにしておきますが、めちゃくちゃ良いシーンばっかだったので是非劇場で見て欲しいです。
俺あんま邦画は見ないんですけど、やー今回は見に行って良かった。俺みたいなタイプにはぴったりでしたね。

んまぁホラーと人間関係のごちゃごちゃとゴーストバスターズがごった煮になってるので人によっては消化不良感が残るかもしれませんが、見た後に色々考えたいマンにはおすすめですよ。見ましょう。
柴田理恵がここまでかっこいい映画、「来る」だけだよ!




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